以前に地元のローカル新聞紙の文芸欄に川上弘美さんの『古道具 中野商店』の書評が掲載されていた。そこに書かれていたものはこの話の最大の魅力である「半端」さがいつしか「魅力」へと変化していくこととあった。
なるほど、どの章の登場人物もどこか半端である、それが劇中同様に経過する時間が魅力になっていったり他者の力を得て大きな魅力を発してくようなそんなイメージが溢れている。登場人物達も徐々にそれぞれの殻を破り本来の魅力に溢れた存在と変化している。決して説明的なものは無い、相変わらずの淡々とした日常を丹念に描いているだけなのにである。そういうわけで言葉として「半端」と評した今回の書評を見て思わず納得してしまった。
やはり川上弘美さんという人の紡ぐ話は心地よい、それはそこに流れる時間が私の時間に非常に近いからでは無いか、「半端」というものが私そのものではないか・・・。いろいろ考えてもそればかりである。
彼女の作品は回を追うごとにその時間がゆったりとなっていく。『センセイの鞄』からその流れは続き、私も一緒にゆったりとなっていく。そして川上さんの文章に溶け込んでいくように、私も消えてしまいそうな錯覚を覚える。それはとても心地よい瞬間なのかもしれない。

